今朝、六本木からの運送の途中、あの現場を通った。今年3月に起きた、暴走車との激突事故でタクシー運転手が死亡したところだ。
酒酔いの運転者がパトカーに追跡され、130キロ以上の猛スピードで赤信号を無視して突っ込み、交差する道路を通行していたタクシーほか数台の車に衝突、それらの車の運転者を死亡・負傷させた事故だ。
先月通ったときも、真新しい花が手向けられていたが今日もまた供えられていた。
そのとき加害者の車に同乗していた18歳と19歳の少年も、飲酒運転と知っていたとして道路交通法違反の疑いで送検されたという。
死亡したタクシー運転手は国際タクシー(km)三鷹営業所所属の49歳の男性。元同僚だった知人からは個人タクシーを目指していたとの話も聞かれた。本人や家族はどんなに無念だったろう。
交差点の直前から別のタクシーのドライブレコーダーにとらえられた映像は繰り返し流されたので、強く印象に残っている人が多いと思うが、助手席側から突っ込まれたにもかかわらず、トランクから運転席までぐしゃぐしゃになていた。もし乗客がいたら、間違いなく命を奪われていただろう。
私の地元エリアなので、本当に他人ごとではない気がしている。
今回のことでひとつだけ気になっていることがある。それはタクシーの安全性ということだ。タクシー会社が通常使用している車両は、タクシー専用やそうでなくても安価なものが多い。事故にあった車両も運転席エアバッグは装備されているものの、サイドビームやカーテンシールドエアバッグなどはないと思われる。
乗客の安全も考えるなら、本来こうした安全装備はタクシーにこそ全車に搭載されなければならないのではないのか。
スキーツアーバス事故の時にも考えさせられたが、今は価格優先つまり「安ければいい」という風潮が強く、そのために安全性は置き去りにされ、一度惨事が起きると後追いで対策を講じている。やはりその根っこには、いろいろな分野での規制緩和がすすめられ、経済最優先の社会になってしまったのが原因としてあるのではないかと感じる。
ここらで立ち返って、ある程度のコストは負担しても、安心・安全に暮らせる世の中にしていかなくてはいけないのではないか。
道路運送法の間隙をぬって、レンタカーと運転者紹介を兼ね合わせた商売やウーバーなどが盛んにアプローチしているが、要は「白タク」なのだ。
多少値は張るものの、万一の時にも補償が万全で、世界一といわれる日本のタクシーをこれからも選んでいただきたいし、我々業界もそれに応えられるよう努力すべきだろう。
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