昨日、とんでもない事件が起きた。いうまでもなく、相模原市で起きた障害者施設での大量殺人事件である。
じつは、私には44歳になる知的障害を持つ息子がいる。これまでも、障害者施設や老人介護施設などで職員による入所者への虐待が明らかになるという事件がたびたび起きてきたが、そのたびに私たち家族は暗たんたる思いを強くしてきた。
しかし、今回はそのようなものとは比較にならない衝撃を受けた。
動機の解明は、まだこれからだろうが、報道されている限りでは、意思疎通のできない重度障害を持つ入所者を中心に命を奪う犯行が行われたということだ。
私の息子は、世田谷区立の福祉作業所に通っているが、将来私たち両親がいなくなった時には、入所施設へと考えていたところだ。それだけに今回の事件の衝撃は、私たち親にとっては計り知れないほどであり、今の通所施設から早速『津久井やまゆり園事件の報道を受けて』とする保護者宛ての文書が届いた。
なぜこんなことが起こるのか。理由は単純ではないと思うが、これまでの経験に照らして、障害者や介護老人が置かれている現状が幸せ感とは程遠く、そこに働く職員にもやりきれなさがあるのではないかと感じる。加えて労働条件が劣悪で、社会的弱者へ寄り添うことへの高尚な情熱を持ち続けられないという環境があるのではないだろうか。
障害者を差別することを禁止する法律や、地域社会で健常者と変わらなく生活できるよう環境整備を義務付ける基本法などが施行されたが、一方ではそれを実施するための人的保障がまったく進んでいない。
今回の犯人が衆院議長あてに渡そうとした手紙の内容には、障害者が置かれている現状を悲惨なものととらえ、その命を奪うことが幸せにつながるなどという勝手な思い込みがあるように見られるが、現状への見方はあながち的外れとも言えないように感じる。
私たち関係者もこの事件の真相を注意深く見つめる必要があるが、単なる異常者が起こした奇怪な事件ととらえるだけでなく、深層に何があるのかを生意気のようだが社会の皆さんに考えてもらいたいとも思う。
|